GYPSY QUEEN / アジアの朋友たちへのメッセージ
日本人のグループだが、中国や東南アジアの各国語での歌も歌い、中国その他の地域でのライブを繰り返しているバンドがある。それがGYPSY QUEEN(ジプシークイーン/吉普賽女郎)だ。チャイナロック(中国揺滾)のMLで、リーダーのAkiさんによるライブの告知投稿があったので、行ってみることにした。
アルバム「SILK」発売記念ライブ、2004年10月25日、表参道FABにて。
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- GYPSY QUEENについてよくある質問については、QAのページが詳しい
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□ GYPSY QUEENのテーマは?
アジアの音楽をもっと広めていきたい。それは日本をアジアに広めることでもあり、アジアとの相互理解につながると思う。僕らがアジアに出てゆき、一つの文化として感じてもらえるようになりたい。相手の気持ちになり、相手と同じ目線で同じ言葉を使うことで交流をしてゆきたい。それがGYPSY QUEENのテーマ。
「もっと多くの人々と語り合おう、アジアの時代が来ている今、もっと僕らの空を広げていこう」GYPSY QUEEN
ライブはアルバムタイトルにもなっている「SILK」から始まった。激しいビートと勢いあるボーカルShinonの声がステージに炸裂する。続けて2曲目の「LUXOR(ルクソール)」。メロディアスなロック、ひたすら激しくドラムがリズムを刻む。
ギター・ベース・ドラム・キーボードの男性4人は、アルバムのジャケットと同じ白い服装。Shinonはタイシルクやインドの上衣、バリのイヤリング(あと北京の足裏マッサージ屋でもらった靴下)に身を包んでいた。
曲間のMCは、MCというより雑談というか気軽な会話に近い雰囲気だが、それがまた違和感がない。メンバー同士、息が合っていなければこういう流れにはならないだろう。
メロディーは70~80年代ニューミュージック系のイメージにロックを強く効かせたというイメージがある。久保田早紀あたりの雰囲気もあるかもしれない。また、香港のロックバンドBEYONDのWingとコラボレートしたり、マンガ「花より男子」の台湾でのドラマ化「流星花園」の主題歌(アイドルグループF4が歌って大ヒットした)をカバーして歌ったり、とアジアン・ポップスの香りも色濃くたたえている。
楽曲や演奏が洗練されているあたり、やはり日本から生まれたロックバンドという印象だ。しかし、中国も台湾も香港もラオスもモンゴルもチベットも、東南アジア諸国もすべてターゲットとする視野は、国境を感じさせない。GYPSY QUEENには「アジア」という枠組みしかないのだ。J-POPなのか、Chinese Rockなのか、それともAsian Popsなのか、といった問いかけはまるで意味をなさない。GYPSY QUEENは、イコール「アジア」なのだ。
度肝を抜かれたのは「康定情歌」だった。女子十二楽坊ファンにもお馴染みのこの中国・四川省の民謡は、これまでいくつかのバージョンで聴いたことがある。黒鴨子演唱組、張恵妹、そして女子十二楽坊といったポップアレンジも含め、今も広く愛唱されている伝統曲だ。だが、GYPSY QUEEN版「康定情歌」のアレンジはすさまじかった。
「跑馬溜溜的山上」ここで歌は止まり、ドラムのMasaoがひとしきり暴れまくる。
「一朵溜溜的雲喲」ふたたび歌はストップ、そしてドラムが暴れる。
「端端溜溜的照在」またもやドラムがうなる。
「康定溜溜的城喲」――そしてメインメロディへ入ったとたん、16ビート全開、ロックの激しいリズムが暴走する。ここまであの「康定情歌」が化けるとは。この一曲を聴けただけでもこのライブの意味があったというものだ。(※アルバムではアレンジが少し違っている)
ハードなロックだけでなく、アコースティックな演奏も力強く歌いあげるパワーが感じられる。
モンゴルの馬頭琴も取り入れた「Children's song」は、モンゴルの極寒をしのぐためにマンホールに住む孤児たち、マンホール・チルドレンのために歌われている。「Born in China」は三国志の舞台を歌っている。「Vientiane」は文字どおりラオスの首都を歌った曲。時代も場所を超え、深いメッセージの込められたアジアン・ソングの数々が、アピール力の強いメンバーの演奏と歌によって胸の中に叩きつけられる。
重慶でのアジアカップのためにつくられたという曲が「FIGHT IT OUT(勝利和奇跡)」だ。これはすごく気に入った。まさにスポーツ番組のBGMになってもおかしくない勢いのある歌だ。
君の夢が君の勇気が奇跡を起こす
君の力で全てをかけて勝利をつかめ
残念ながら重慶では「反日」の話題がクローズアップされる結果となってしまった。だが、GYPSY QUEENはその「反日」騒動後に中国に行った。そこで彼らは日中問題をあえて語った。
Shinonが話し始めると明らかに会場の雰囲気が変わった。針のようなとんがった空気が身を切り裂くように教室を埋め尽くす。「私たちは私たちのおじいさんやおばあさんが生きていた時代の出来事を知っている。それはとってもこの両国にとって悲しい歴史である。今僕らは時代をさかのぼることはできない。だからこそ今を生きる僕らが過去の歴史を理解した上で新しい関係を気づいていくことができればとおもう。そのためにはお互いが理解をしないといけない。だから僕たちは中国に来る。ここにいるたくさんの友人と会うために」Shinonが話し終わると全員から大きな拍手が出た。学生の目はさっきとは違っていた。予想以上の反響。国を愛する人たちの当然といえば当然の反応。ただしそれはいい方向への反応である。戦うよりも結び合うほうがいいに決まっている。
たかが音楽である。でも、その「音楽をやる僕らの気持ち」は完全にこの教室の中のすべての中国人に理解を得たのではないかと思う。
(GYPSY QUEEN ROAD TO ASIA 2004 Wiredより)
女子十二楽坊を知って、中国の音楽、中国の文化、中国の言葉、そして中国の人たちに対して今までよりもずっと興味を持つようになった。それはもちろん、素晴らしい友達としてである。そして、十二楽坊のメンバーたちも日本を好きになってくれただろう。GYPSY QUEENは反対に、日本からアジアの友人たちへのメッセージ、プレゼントだ。偏狭な意地の張り合いも、偏狭な利権の奪い合いも超えて、国境線を越えて、アジアという文化圏に生まれた友人たちと溶け合う――GYPSY QUEENの歌を聴いていると、それは決して不可能なことではないように思える。
いつか、アジア中から集まった好朋友たちと一緒にGYPSY QUEENの熱い歌を聴ける日が来ることを楽しみに待っていよう。


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